第23章 命の重さ~second~
それから一週間後の朝だった。
ベッドの中でまだ夢の中だった俺に、田村さん急変の連絡が来たのは...
心筋梗塞だった。
慌てて着替えて病院に駆けつけた俺は、
当直のドクターと、考えうるすべての手は尽くしたが、家族が来るのを待っていたかのように、最後は眠るように息を引き取った。
.........
泣き崩れる娘さんやご主人、息子さん夫婦を目の前で見ながら、俺は唇を噛みしめていた。
笑顔で頑張るといった田村さん...
また太郎と暮らすと、楽しみにしていたのに。
こんなに呆気なく逝ってしまうなんて...
俺は、何て無力なんだ...
十分に予測して、しっかりと管理していたのに。
消えゆく命の前で、俺はどうすることもできなかった。
田村さんを呼び戻すことが、
出来なかった...
全ての延命措置を望まない、という田村さんの事前要望書を受け取っていたので、俺はただ、田村さんが旅立つのを、側で見送るしかできなかった。
今まで、こんな風に、何度も患者を見送ってきた。
その度に、自分の力不足を痛感して、
悔しい気持ちでいっぱいになる。
ご家族に、それまでの治療について、感謝されれば尚更だ。寧ろ、なぜ救えなかったのかと、罵られる方が気が楽だ...
いつになっても、
何度経験しても、
この瞬間だけは、胸が苦しくて泣きそうになるんだ...
医療って、何だ?
医者のできることって...
もっと違う治療や薬を使っていたなら、もう少し、この瞬間を遅く出来たんじゃないか?
最善だと信じて行っていた治療に疑問を感じ、後悔の念に駈られる。
医療現場は、これの繰り返しだ。