第23章 命の重さ~second~
「彼は、相葉です...私の...」
「同僚です。」
重ねるように雅紀が答えた。
「そうでしたか...相葉さん...本当にありがとう!君は信頼できる人だって、太郎が言っていました!」
「太郎が~?そうですか...それは嬉しいなぁ~」
「本当に、何て感謝していいのか分かりません...」
深々と頭を下げる田村さんに、
「太郎がお利口だったからできたことです。」
雅紀はそう優しく言った。
「翔先生、私、手術を受けて健康な身体に戻りますよ!そしてまた、太郎と暮らします!...太郎も待ってくれているので...」
「じゃあ、たくさん食べてしっかり身体作ってくださいね~」
「はい。よろしくお願いします」
雅紀は、またケースに太郎を戻すと、
車に乗り込んだ。
「雅紀、ホントにありがとう。俺一人じゃ、絶対にできなかったよ」
「そうだろうね~...」
「...感謝してるよ...」
「翔先生♪田村さんを元気にしてよ~!太郎も願ってるんだから...」
「うん!絶対に...」
すると雅紀は運転席から手を伸ばして、俺を引き寄せ、そっと唇を重ねた。
直ぐに離れて周囲を少し確認した雅紀は、
「頼もしいね...」
と、花のように微笑んで、車を出した。
俺は、雅紀の運転する車を、見えなくなるまで見送っていた。
...頼もしいのは雅紀だよ。
本当によくできた看護師さんだよ...
そして、最高のパートナーだ。
雅紀の存在が、俺にとって、掛け替えのないものなんだと、改めて感じた。
そして、そう思えたことが、堪らなく嬉しかった...
田村さんの心の拠り所が太郎なら、
俺は雅紀なんだよね~...今更だけど...
人は...
一人じゃ生きていけない。
心を重ねられる人の存在が、生きる源...なのかもしれないな...