第23章 命の重さ~second~
「太郎...おいで、もう出てきていいんだよ...」
雅紀が太郎を抱き上げて外に出した。
「太郎!!太郎!!」
両手を差し出した田村さんの元に太郎は駆け寄った。
「太郎...元気にしてたのか?少し痩せたんじゃないのか?太郎!よく顔を見せてくれ...」
田村さんは太郎を抱き締めた。
「太郎、きっと大きな声で吠えたいんだろうね~...会いたかったよ!って...」
二人...正確には一人と一匹の再会を見守ってる俺に、隣の雅紀が、そんなこと言うもんだから、何だか泣きそうになる...
そんな俺の気持ち、分かったのか、雅紀は俺の右手をぎゅっと握ってくれた。
「雅紀...」
雅紀はにっこり笑って、すぐにその手を解いた。
勿論、そんな俺たちには目もくれずに、田村さんと太郎は再会を喜び合っている。
温かい...優しい空気が部屋の中を満たしている。
危険を犯し、連れてきてよかった。
...連れて来たのは雅紀だけど...
田村さんの願い、『それは無理です』と断ることもできた。事実、重症患者には、子どもの面会さえ許されてはいない。ましてや、犬なんて...
「太郎...必ず元気になるから...一緒に家に帰ろうな~...」
太郎は主人の言葉を、ちぎれそうなほどに尾を振って応えている。
きっと、分かっているんだろう...
田村さんの言葉、田村さんの気持ち...
ずっと見ていたい光景だったけど、そうもいかないので、
「田村さん...そろそろ...」
声を掛けると、田村さんは涙でぐちゃぐちゃの顔をタオルで拭いて、
「翔先生...ありがとう...それと...」
と、雅紀に視線を送った。