第23章 命の重さ~second~
【 翔side 】
約束の時間ピッタリに、
雅紀の運転する車が地下駐車場に入ってきた。
俺は、その横に用意しておいた洗濯物の入る大きなケースを横付けした。
「翔、連れて来たよ!」
窓を開けて雅紀が笑顔を見せた。
「ありがとう!大丈夫だった?」
中を覗き混む俺に、出てきた雅紀が後部座席のゲージを開けた。
恐る恐る近付くと、中から同じように恐る恐るという感じで、柴犬が顔を出した。
「お前が...太郎?」
おずおずと尋ねると、その犬は吠えはせずに、嬉しそうにハアハア舌を出した。
「そっか...」
そんな俺と太郎の様子を見ていた雅紀が、
「...翔...もしかして、犬、苦手なの?」
「あ...犬っていうか...俺、動物はあんまり...」
「プッ...」
吹き出した雅紀に、俺は口を尖らせて、
「何だよ~?いいだろ~?別に...」
「いや...いいけどさ(^^♪よくそんなんで、犬連れてくる、何て約束したよね~」
笑う雅紀に、俺は拗ねて横を向いた。
「翔、可愛い❤」
そんな俺の頬に、雅紀がそっとキスをした。
「くぅ~ん...」
それを見ていた太郎が、なぜか鼻を鳴らした。
「よし!太郎、こっちに入るからな~?」
雅紀がそう言って太郎を抱き上げて、ケースの中に入れた。
抵抗することもなく大人しく従う太郎に、
「太郎、今から田村さんのところに連れてくからな~?絶対に吠えちゃいけないよ!静かにしてるんだ!...出来るな~?」
「くぅ~ん...」
「よし!いい子だ。暫く辛抱しろよ?」
そう言って、雅紀はケースのファスナーを締めた。