第23章 命の重さ~second~
【 雅紀side 】
その日は、翔と綿密に計画した日。
俺は休みだったけど、いつも通りに家を出た。
田村さんの娘さんの家に行って、太郎を連れてくるため。
正直不安もあった。
太郎が、誰にでも吠えて泣き止まないような犬じゃ、この計画は上手くいかない...
田村さんは、利口で大人しいとは言っていたけど...
「こんにちは~...相葉です」
玄関のチャイムを押して暫くすると、玄関のドアが開いて、女性が顔を出した。
「田村さんの...」
「はい、父がいつもお世話になっています」
リビングに通されると、茶色の塊が...眠っているのかな~?
「それが太郎です...父がいなくなってから、すっかり元気がなくて...」
「そうですか...太郎?田村さんに会いたい?」
俺が太郎に手を伸ばすと、
それまで丸まって眠っていた太郎が、弾かれたように顔を上げて俺の前にお座りした。
「...嘘...太郎に分かるのかしら?」
「...きっと、そうだと思います...」
太郎はつぶらな瞳で俺をじっと見ている。
「太郎、今から田村さんの病院に行くけど、吠えちゃダメだよ?静かにしていられる?」
すると驚いたことに、太郎は、俺の言葉に頷くかのように頭を下げた。
......犬だって、ちゃんと心が分かるんだ。
自分に嬉しいことをしてくれる相手には、ちゃんと誠実に向き合うんだ...
...翔ちゃん、きっと上手くいくよ...
俺は心の中で、そう呟いていた。
娘さんから太郎を預かった俺は、来た道を病院へと車を走らせた。
病院の地下駐車場で翔と落ち合うことになっていたので、約束の場所に行くと、俺のLINEを見た翔が、もう準備完了で待っていてくれた。