第22章 命の重さ
「涼介...」
オロオロする母親を振り切って涼介くんは立ち上がってさらに興奮して、
「嘘ついたんかよ?適当なこと言って...
サッカー出来ないと、俺、生きてる意味なんかないんだよ!サッカー出来ないんなら、死んだ方がまし..」
「涼介!!」
目に涙を溜めて、それでも彼の母親は毅然と言った。
「サッカー出来なくても、涼介は涼介でしょ?お願いだから、そんなこと言わないで...」
腕に縋り付き訴える母親を振り切って、
涼介くんは俺を睨んで、怒りを露わにした。
......そんな彼に、俺は静かに言った。
「座って聞いて欲しい...」
渋々ながらも、彼が椅子に座るのを見てから、俺は静かに話し始めた。
「俺も昔、君より少し前だな...中学生だったから。人生に絶望する出来事があったんだ...
この世から、消えていなくなりたいと...毎日そればかり考えていたよ」
「......」
涼介くんが、じっと俺を見つめている。
「この先、何もいいことなんかないって...全てが嫌になって...やけになって...世間から逃げて、部屋にこもっていた...絶望の色って...あんな感じだったんだ、って、今も思うよ...」
「先生が?...嘘、だろ~?」
「嘘じゃないよ...親にも心配かけた...」
俺は、あの絶望の日々を思い出していた。
......真っ暗闇で、先が見えなくて...
死にたいと思っていた。
あの時の自分。
俺は、涼介くんをしっかりと見つめて言った。