第22章 命の重さ
【 翔side 】
「おはようございま~す」
いつも通り、早めに病院に行った俺は、担当の患者のカルテと、検査結果などを確認して診察の準備をした。
そこに。
先日検査をした、サッカー少年山田くんの結果もあり、それは、思っていたよりもよくないもので。
内科とも相談しながら投薬による治療が考えられるが、改善されなければ手術を進めることになるだろう。
何より...
激しい運動は、無理だ。
サッカーでインターハイに行きたいと語った彼のことが思い出された。
......伝えないと。
決して珍しい症例でもないけど、彼にとってはショックな結果だろう。
思わず唇をかむ俺に、坂本先生が、
「山田くんか?」
と肩を叩いた。
「...はい..」
若いだけに、ショックも大きいだろう。
俺は、主治医として彼の気持ちにどう寄り添うことができるんだろうと考えていた。
予約の時間が来て、相談室に涼介くんと母親が顔を見せた。彼は母子家庭で、母親と二人暮らしだ。
涼介くんの表情は、暗い。
何か、感じているのかもしれない...
「検査の結果と、今後の治療についてお話しますね...」
「......」
涼介くんの大きな目が、俺をじっと見つめた。
「......なので、治療を何よりも最優先していただき、激しい運動は、暫くの間は絶対に...」
「暫くって、どのくらいですか?1か月ですか?2か月ですか?」
「...単刀直入に言います。サッカーはもう..」
「なんでだよ!!!出来るようにしてやるって、治してくれるって、先生、そう言ったじゃん!!」
俺に向けられる怒りの目...
いいんだ。
俺にぶつけることで、君の気持ちが少しでも軽くなるんならば...
俺はじっと涼介くんを見つめ返した。