第22章 命の重さ
「涼介くん...君の目標は新人戦に出ること?」
「えっ?」
「新人戦だけが、君の最大の目標なのかな?」
「......」
「そうじゃないよね?その先も狙ってるだろ?」
彼は落ち着いて俺の話に耳を貸してくれた。
「俺は、君にサッカー続けて欲しいんだ。今まで頑張って練習してきたんだろ?サッカー好きなんだろ?
だったら、ここでしっかり治して、その先の夢も見ようよ...ちゃんと検査して、悪いところがあったら治して、サッカー続けられるようにしなきゃ...」
「...先生...」
「俺を信じて、任せて欲しい...」
「...すみませんでした...よろしくお願いします..」
不安そうな顔で俺と涼介くんのやり取りを見ていた母親に、俺は静かに頷いた。
それから、検査の日程を決め、
無理してサッカーをしないことを約束した。
帰るころには、始めは敵を見るような目で俺を見ていた涼介くんは、すっかり俺に心を開いてくれ、笑顔で帰っていった。
...頭を下げながら帰っていく彼を見送りながら、サッカーを思いっきりできるようにしてやりたい...そう思った。
診察を終了して、その日の患者たちのカンファレンスを行い、治療の方針を決めていく。
終わったのは夜の7時を過ぎた時だった。
携帯を確認すると、雅紀から『夕ご飯にカレー作ったから、終ったら帰っておいでね...』
とLINEが入っていて、カレーの鍋の写メが付いていた。
緊張感から解き放なたれた俺は、自然と笑みがこぼれた。
...雅紀に会いたい...素直にそう思っていた。