第22章 命の重さ
翌日も早めに出勤して、
今日の患者のカルテに目を通す。
「おはようございます、櫻井先生」
ナースたちが声を掛ける。
「あ、おはようございます、今日もよろしくお願いします...」
俺も丁寧なあいさつを返すと、若いナースたちはキャッっと騒ぎながら行ってしまった。
この日、個人病院からの紹介状を持ってきた患者の中に、高校2年生になったばかりの男の子がいた。
「山田さ~ん、お入りください」
母親に付き添われて、不安そうな顔で俺の前に現れた少年は、健康そうに日焼けしていた。
「山田涼介くん。君の担当させていただきます櫻井と言います。よろしくお願いします」
「...お願いします..」
「緊張しないでね..」
俺は、紹介状を見ながらいくつか問診をしていく。すると、
「先生...俺、サッカー出来ないんですか?」
「...涼介くんはサッカー部なの?」
「もう直ぐ新人戦なんです。俺レギュラーに選ばれたから、試合に出たいんだ!」
聞けば、彼の学校は、俺でも知ってるくらいのサッカーの名門校。
サッカー部員だけでも100人近くはいて、試合に出れるようになるにはかなりの競争率だそうで。
「先生、お願い!試合に出れるようにして!休んでいたら他のヤツがレギュラーになっちゃうよ!」
一生懸命に俺に訴える山田くんの真っ直ぐな瞳が俺を見つめる。
「まずは検査してみよう。それから考えようか..」
「早くしてください!時間がないんだ///」
切羽詰まった顔で俺に迫る彼に、俺は静かに言った。