第22章 命の重さ
親父について書斎に行くと、
「まあ、座れ...そんなに硬くなることはないよ」
と笑った。
ソファーに向かい合って座ると、
「帰り際、坂本くんから電話があったよ」
「えっ?先生から?」
....俺、言い付けられるようなこと、
何かしたのかな?
あれこれ考えて首を捻ると、親父は笑って、
「しっかりしたお子さんだと、誉めていたよ」
「あ〜...」
ほっとした。
坂本先生は、親父が大学病院にいた頃、
インターンだったらしく、最初に挨拶に行った時に、櫻井先生にはお世話になったんだ、と言われていた。
「よく気が利く、今時の若者にしては珍しい、って...疲れただろうから、俺からも労ってやって欲しいと言われたよ...はははっ」
....良かったぁ〜(>_<)
大きなため息をついた俺に、親父は笑いながら、
「緊張感は大事だぞ。今の気持ちを忘れないことだ。人間は慣れてくると、知らず知らずに手を抜くことを覚える生き物だ。」
親父は、真顔になって続けた。
「要領を得て立ち回るのは悪いことではないが、それによって、実際は診てないのに、見えたような気になってしまう...
どんなに同じような症状でも、別の何かが隠れているんじゃないか?って、そう疑うことを忘れるな、翔...」
「はい。今の気持ちを、忘れず頑張ります」
.....やっぱり、親父は凄い人だ。
改めて、尊敬できる先輩が身近にいたことを感じて、嬉しかった。
それと同時に、しっかりやろうと、胸に誓った。
「さあ、晩飯にしようか?腹減っただろう?」
「あっ、そう言えば...」
「しっかり食べろよ!身体か資本だぞ」
「はい!」
俺たちは笑い合ってダイニングに向かった。