第22章 命の重さ
外来の診察は2時頃には終わったが、
それから医局にいって坂本先生とあちこち挨拶に回ったり、デスクを片付けていたりして。
結局終わったのは、夜の八時近かった。
雅紀は今日は夜勤だから、もう家を出ただろう。
それでも休憩時間に見ればいいと思ってLINEをした。
『1日目無事終了。これから、実家に行きます。
雅紀も夜勤頑張ってね!』
......愛してるよ、と打とうとして、
やっぱり止めた。
電車で久々の実家に行く。
初日はさすがに疲れたけど、母親にちゃんと勤め始めたことを顔を見て、言いたかった。
それにいろいろ相談に乗ってくれた父親にも、しっかりお礼を言いたかった。
.....家族には、散々心配をかけた。
感謝している。
俺が立ち直るまで気長に、
何も言わず見守ってくれたこと...
有り難かった。
子どもを信頼していないとできないだろう...
俺...
あんなだったのに...
実家に着き、鍵を開けて玄関を入った。
「ただいま~...」
靴を脱いでリビングに入ると、
キッチンにいた母親が、
「おかえり...お疲れさま」
と言った。
そのあまりにもナチュラルな...逆に言えばあっさりしすぎている対応に、俺は思わず苦笑いだ。
...いつも、そうだった。
これが母親のスタンス。
いつも気張らない。いつも同じ...
機嫌よすぎることも、悪くて近寄れないこともない。
いつも変わらず、穏やかで落ち着いていて...
...だから安心するんだ、多分。
「いろいろありがとうね...」
照れくさいけど、一応そう言って感謝の気持ちを述べたのに、母親は、
「なによ、それ...」
って...
そう言って背中を向けてしまった。
...まあ、抱き締めて労ってほしい訳でもないんだけどね...(^^;