第21章 旅立ち 〜departure〜
【 雅紀side 】
軽く要塞に見えなくもない巨大ホテルが、
今夜の俺たちの宿。
海に面して建ってるから、全室オーシャンビューらしい。
俺たちの部屋は、福引の特等だけあって、
一応最上階の貴賓室。
父ちゃん母ちゃん、ほんと感謝だよ(≧▽≦)
翔の卒業旅行に、こんなとこじゃ...
って思う気もあったけど。
いやいや、なかなかいい感じだよ~?
「お――っ///...いいじゃん!!」
...部屋からの眺めは最高で。
流石は、商店街の福引きの...
↑何度もしつこい...
「雅紀!部屋に風呂もついてるよ~!ちょっと来てみろって///」
説明してくれていた仲居さんが苦笑いして、
「何かありましたら、内線でフロントまでお願いします。では...これで...」
「ありがとうございました!」
翔は説明なんか全然聞いてなくて...
見ると、テラスの手すりに凭れて、海を見ていた。
「翔...はしゃぎ過ぎ..」
そう言いながら、
俺も翔の隣に並んで海を眺めた。
水平線はぼんやりと霞んでいて、
大型のタンカーが小さく見えた。
「雅紀...お父さんたちにお礼しといてね...
俺たちが楽しんじゃって、申し訳ない..」
「いいんだよ...どうせ来れなかったんだし...
一回、餃子でも食べに行ってやってくれれば...二人とも、翔のこと大好きだから...」
「ホントに?」
「お前の友達には、勿体ないって!俺なんなんだよ...」
俺が笑うと翔も笑った。
......なんて幸せなんだろう...
見つめ合った俺たちは、
どちらからともなく、吸い寄せられるように
唇を重ねた。
触れただけの翔の唇は、
ほんの少しだけ冷たかった。