第21章 旅立ち 〜departure〜
【 翔side 】
もうすぐ俺も卒業し、本格的に医師としてのスタートを切る。
就職先は、このまま大学病院の研究室に残り、循環器内科への配属が決まっていた。
いづれは雅紀と一緒に親父の病院に勤務する。
大学病院の仕組みも、正直面倒だ。
でも、しばらくはいろいろな患者と向き合い、多くの経験をして力を付けたい。
いろんな症例に向き合い、実績を積みたい。
後1月余りで社会人としての一歩を踏み出すんだ。
不安がない訳じゃない。
医師としてもまだまだで、いざという時にどう立ち回れるのか、自信がある訳じゃない。
でも...
2年間の経験は無駄じゃない、はず...
俺は期待と不安を抱えて、巣立ちの春を迎えようとしていた。
パートナーの雅紀は、もうベテラン看護師のように、スムーズにてきぱきと働いているようで、
これからという俺にとっては、眩しい存在でもあった。
そんなある日。夕飯の片付けをしていると、
↑雅紀が作ったのでせめて、片付けをしている。
「翔、ちょっといい?」
「あ〜、どうした?」
リビングに行くと、テーブルの上には房総にある有名な温泉のパンフレットが...
「どうしたの?これ...」
「ここ、ふたりで行かない?」
「えっ?」
聞くところによると、雅紀の親が商店街の福引きで特等を当てて、それがこの温泉のペア宿泊券だったとのこと。
「親父とおふくろで行きたいって思ってたらしいんだけど、店も休めないし。
で、俺に行かないかって...
翔、一緒に行こうよ!」
「いい〜ね♪いつ?」
「来週の木金なんだ〜...時間取れそう?」
何て言うことでしょう!!
注:某住宅リフォーム番組ではない。
その日は偶然にも、最後の連休だったんだ。
雅紀が休みなら、出掛けようって思ってところだ。