第20章 卒業~Graduation~
「翔...何かあったの?」
「......」
「翔ってば!!」
「雅紀...卒業おめでとう...ごめん、待ってなくって...なんか俺疲れちゃって...」
そう目を伏せる彼は、明らかにいつもの翔じゃなかった。
「そんなのいいんだよ~..翔、何か嫌なことあったんじゃないの?」
「...何も...」
「...翔...おいで。」
そう言うと素直に俺の腕の中にするりと入り込んできた。俺はその身体をしっかりと抱き寄せ、頭を何度も撫でた。
「嫌なら、言わなくてもいいんだよ...俺は、何があっても、翔のこと...翔の言葉を信じるからね...」
「......まさき...」
言いたくないのは、言わなくてもいいんだ。
翔が必要だって思ったら、
話してくれるはずだから...そうだよね?
「もう、寝よう...」
「...うん..」
「こうしててあげるから...」
「...雅紀」
翔が少し離れて俺を見た。
「雅紀...好きだよ...」
そう言って唇を重ねて来た。
軽い音だけ立てて離れていこうとするそれを追いかけて、今度は俺から赤いそれを奪った。
何度も何度も、啄むように口づけてから離して、
「おやすみ...」
そう言うと、翔は花のように笑った。
......ずっとこうして抱き合っていたい。
手を離すと、どこかに行ってしまうんじゃないかって、そう思う時があって、少し不安になる。
この幸せが、いつか終わるんじゃないかって...
......ダメだね...
人は幸せすぎると、不安になるんだね...
暫くすると、腕の中の愛しい塊が、
可愛い寝息を立て始めた。
それを聞きながら、俺も夢の中に落ちていった。