第19章 君を守るために
【 雅紀side 】
いつまでも震えが止まらない君を、
早く抱き締めてやりたい。
玄関のドアが閉まったのと同時に、俺は後ろから翔のことを抱き締めた。
翔は何も言わずそのまま俯いている。
「翔...こっち向いて...」
それでも、こっちを向こうとしない彼の身体を、ゆっくりと反転させる。
抵抗もせずに、俺のことを上目遣いで見上げる翔の目は、涙がいっぱい溜まっていて、俺は胸が苦しくなった。
『守れなくてごめん』なんて言っても、
君はきっと、自分を責める。
だから、ここでは何も言わず、俺は唇で翔の涙をそっと拭ってやってから、優しく抱き締めた。
彼は、何も言わず、俺の腕の中に居る。
でも、さっきと違って力を抜いて、俺に身体を預けてくれているのが嬉しかった。
「お風呂落としてくるよ...入ろう...」
「うん...」
俺は、靴を脱いでリビングのソファーに翔を置いて、
風呂場に急いだ。
お湯を落としている間に、
コップに水を汲んで持って行った。
それを翔に渡して、
「着替え用意してくるよ」と言ったら、
「ありがと..」
そう言って、少しだけ笑ってくれた。
一番怖いのは、また翔が自信を無くしてしまうこと...
自分はダメだって...そう思って、殻に閉じこもってしまうのが怖かった。
誰にだって、思い出したくない過去のひとつやふたつあるって、翔に分かって欲しかった。
自分だけがトラウマ抱えてる訳じゃないってこと。
大切なのは、その傷を見つめて、目を反らさないことだ。
......翔、俺がいるからね。
いつも君の側に...
だから、辛いときも苦しいことも、
全部俺にちょうだい...
ふたりで分けよう...
君の苦しみ、俺に半分背負わせて。
「お風呂、溜まったよ...一緒に入ろ..」
「......うん」
翔は俺の手を取った。