第19章 君を守るために
【 翔side 】
時間が経つにつれ、無性に自分に腹が立った。
何で簡単にあんなところに連れ込まれたんだろう。無断してた....
それに、俺..
息が出来なかった!
怖くて身体が硬直してしまい、あいつを押し退けることができず、なすがままになってしまった。
もう大丈夫だって思って、この頃は忘れていた、あの忌々しい過去の記憶が.....
雅紀のお掛けで、乗り越えられたと思っていたのに。
俺って、こんなに弱い人間だったことに、
今更気付かされて、情けなくて...
雅紀が、俺の側に居てやれば良かった、なんて、
そんなこと言ってくれてるけど...
こんな大人になったのに、自分の身も守れないなんて...ホントに、悔しくて、涙が出るよ...
岡田くんに圧し掛かられて、唇を塞がれたとき、
恐怖で身体が動かなかった。
必死に抵抗すれば、
押し退けられないはずないのに...
あの日の記憶が...
忘れたと思ってたあの記憶が、頭の中にフラッシュバックして、岡田くんを拒否しきれなかった。
こんなんじゃ俺...
独り立ちして、医者としてやってくなんて、出来るのかな~?
黙って何も言わない俺を、雅紀が気遣ってくれてるのが痛いほどわかるけど...
...腕を引き寄せられて、力ずくで抱き締められて、押し倒されたあの瞬間...
思い出すと、震えが止まらないんだ///
...雅紀...
雅紀......
すると、肩を抱いていた雅紀が、俺の手を強く握ってくれた。その手が、あんまり温っかくて。
その溢れる優しさに、思わず涙がこぼれた。
俺と雅紀は、マンションまで、
そのまま手を繋いで帰った。