第19章 君を守るために
【 翔side 】
この日は、外来に来る患者さんの診察を見学する。
まあ、見学といっても、
ただ突っ立ってメモ取ってるだけの実習は終わってるから、ドクターやナースの指示で、診察をさせてもらうようなこともある。
問診の段階で、学生も診させて貰ってもいいかどうか、確認を取ってからになるが、打診するのも、比較的経産婦が多い。
この日も、2人目の妊娠の検査に訪れた女性にドクターが許可を取った。
内診自体は何度か経験しているので、そんなに緊張もしてない、けど。
今日は、俺の後ろで雅紀が見てる。
良いとこ、見せなきゃ!
「村上さ〜ん、ちょっと失礼しますね〜」
俺はそっと、患者さんの膣に器具を挿入した。
目で見た限りは、内壁に異常はない。
「村上さん、内診しますね」
俺はゆっくりと患者さんの中に指を入れた。
中で指を動かすと、
「..ぁ....」患者さんが小さな声を洩らした。
「大丈夫ですか?村上さん、痛いですか?」
「あ...いえ...すみません...」
「もう少しだから、頑張ってくださいね」
「...あ、はい...」
この人、敏感なんだな...
俺は指先に神経を集中させて、内診を続けた。
「どうだ?櫻井。分かるか?」
「はい、子宮が柔らかくなってますね。後、大きくなってると思います。」
そう告げると、ドクターは俺に代わり、中に指を入れて確認し、
「その通りだな。」と言ってくれた。
その後、カーテン越しに患者さんに、妊娠している今の状況を話した。
よかった!指先で、ちゃんと分かった!
俺はそっと、後ろから見ているであろう雅紀を振り返ってドヤ顔してみせた。
でも、雅紀は、さっと顔を反られてしまった。
....何で?
雅紀の行動の意味が分からなかったけど、
また診察に集中した。