第3章 変わっていくということ ~僕は、ぼくなのに~
おじいさまが亡くなって、
パパが院長先生になったことが、
こんな風に僕に影響してくるなんて、
思いもしなかった。
後になって分かったことだけど、
それまでは、実質病院を動かしていたのはパパで、
おじいさまはあくまで、表向きの代表者。
患者さんのことも、他のたくさんのお医者さんのことも、
看護師さんや介護士さんのことも、
パパがいろいろ指示を出す立場だった。
それが、院長先生になって、
実務の分担化をすると、
パパは今までと違って、時間に余裕ができた。
少しの患者さんと、ごくたまに手術するくらいで、
家にいる時間が多くなった。
小さい時から、ママと二人の時間が、
当たり前すぎて、
パパがそこにいるというだけで、
僕は窮屈で、何でなのか、イライラした。
そして、これはもう僕の意地ってやつで、
テストで、絶対にいい点を取ってやろうと、
そう思って、勉強も頑張った。
絶対にパパに文句を言わせないように!
...サッカーも止めた。
大きくなったら、ブラジルに留学したいなんて夢も、
サッカー選手になりたいっていう夢も、
どうせ、叶わないんだって...
そう思ったら悲しくて、
やる気が出なかったんだ...
僕の意地は、
結果になって表れて、
塾でも常にトップの成績だったし、
全国の模試でも、
上位になって、先生にほめられた。
翔母「翔、凄いね~!頑張ったね~」
翔「別に...」
翔母「ホントは、サッカーやりたいんじゃないの?」
少し寂しそうにそう言うママに、
翔「やりたくても、出来ないじゃん!
止めろって、そう言ったでしょ?」
翔母「翔...でも...」
翔「もういいんだ!!」