第3章 変わっていくということ ~僕は、ぼくなのに~
おじいさまの葬儀は、
たくさんの弔問客で、ごった返していた。
大きなお寺で行われた葬儀...
潤くんや、智くん、雅紀くんに、かずくんも、
お母さんと一緒に来てくれた。
おじいさまは数年前まで、
櫻井総合病院の院長先生だった。
引退して、
パパにその席を譲ってからは、
おばあさまと外国を旅行したり、
僕を釣りとか、サッカーの試合に
連れてってくれたり、
本当に優しいおじいさまだった。
.....あんなに、元気だったのに..
2日前に算数の100点のテストを
見せたとき、
『えらいぞ!』って、
大きな手で僕の頭を撫でてくれた。
ママに叱られて、
泣いていると、
『ママは翔のことが好きだから、
いい子になって欲しくて、
叱るんだよ』
そう言って慰めてくれた。
.....大好きだったのに....
忙しいパパよりずっと、
僕のこと、見ててくれたのに....
....大好きだったのに...
おじいさまのことを思い出していたら、
涙が溢れてきた。
グッと歯を食いしばってみても、
次から次に、涙が出てきた。
...おじいさまと、もう会えないんだって、
一緒に遊んでもらえないんだって、
『翔』って、優しく頭を撫でてもらえない...
もう、あの笑顔を見ることはできないんだ...
悲しくて、切なくて、
後から後から、涙が零れて来て...
僕は、大切な人と、
大好きな人とお別れするって、
こんなに悲しんことなんだって、
初めて分かった...
パパはおじいさまが病室で、
息を引き取ったときに、その手を握って、
涙を見せたけど、
お通夜と告別式では、
一度も泣かなかった。
大人の男は、人前では泣かないんだって、
パパを見て、そう思った。