第17章 医学の道、その2歩目
毎年サークルで利用している山小屋風のペンションが今回の宿。
こじんまりしたそのペンションは、俺たちで貸し切りだった。
食事を済ませ、ミーティングが終わると自由時間になった。風呂もそれほど広くないので順番に入ることになったが、翔が、
「俺、忘れ物したからコンビに行ってくる...雅紀もついてきてよ~」
「うん、いいけど...」
「お前らさ~、そんなにべたべたしてなくてもいいだろうがぁ~!」
同じ班の先輩に揶揄れたが、翔は平気な顔して、
「羨ましいんでしょ~(^^♪先輩も他の人とどうぞ!」
って、笑って言った。
俺たちは完全防備で出掛けた。
冬の信州は寒い...東京育ちの俺には、
その寒さは、驚異的だ。
翔に言わせると、今日はまだ暖かいそうだ。
「翔、コンビニ、こっちじゃなかった~?」
反対方向へ行こうとする翔を、俺は呼び止めた。
「雅紀~、ホントにコンビニ行くって思ったの~?」
「えっ、違うの?」
首を傾げる俺に、
「星観ようって、言ったじゃん❤ほら、こっち~」
そう言いながら、翔は、俺の手を取った。
確かに...空には満天の星空が広がっていた。
ペンションの横の細い道を上っていくと、そこは小さな公園になっていた。
「ここ座ろう..」
翔に促されてベンチに座ると、そこはもう、あの時のプラネタリウム...いや、それ以上の180度パノラマの星が、降ってきそうだった。
「すげぇ~...」
思わずそう言った俺の肩に、翔が凭れてきた。
「雅紀と観たかったんだ...この星空...」
「翔...」
......星って、こんなにたくさんあったんだ...
っていうくらいに、数えきれない無数の星たちが、俺と翔を見下ろしていた。
...時間が止まったみたいだった...