第16章 医学の道も一歩から
「君たち//大丈夫だったか?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございました。」
俺が頭を下げると、喧嘩と言ってもまだ小競り合いの段階だと見た警官は、
「気を付けるんだぞ?ああいう輩は、何かにつけて難癖付けてくるからな〜。関わらないようにした方がいい...」
「はい、分かりました。助かりました。
ありがとうございました」
俺は出来るだけ丁寧にお礼を言った。
「君も...大丈夫?」
もう一人の警官が、俺の後ろの翔の顔を覗き込んだ。
「...はい..大丈夫..です..」
そして、警察官たちは行ってしまった。
明らかに何か仕出かしそうなチンピラ風の奴等と、どっから見ても真面目な大学生と、喧嘩の原因は聞かなくても分かる、と言うことか?
特にいろいろ言われなくてほっとした。
さぞや翔が怯えているだろうと心配して、顔を見ると、意外にも、その目には、凛とした強さを湛えていて、俺は寧ろ戸惑った。
「....翔...?」
「...........雅紀...俺さ、何ともなかった....平気だったよ...」
「.......」
翔が俺の目を真っ直ぐに見つめながら、
「俺さ、あいつ等にどっかで会ったらどうしようかって、前はずっと怖かった。
でも、だんだんとそんなこと、忘れてって....
さっき会って、自分でも驚いたのは、あいつ等に感じたのは、怯えじゃなくて、憎しみだけだった。」
「..翔...」
「悪いのはあいつ等なのに。だからこそ公の場で罰してもらったのに、ずっと怖かった....
だけど。
俺、乗り越えてたんだって、
さっき気づいたよ。
それもきっと、雅紀のお陰。雅紀が俺のこと支えてくれたから....」
.....そう言いきった翔の目は、
本当にキラキラと輝いていた。