第14章 すれ違う中で
翔は、驚いた顔して俺を見てから、
「何で?...遠藤のこと、言ってるの?」って...
認めるんだね...
全力で誤魔化したりしないんだね...
その誠実さが、時に嘘をつくより、人を傷つけることがあるってこと、知らないでしょ?
「見たんだ...イタリアンの店の、廊下で...
遠藤なつさんって、娘と...キスしてたの...」
びっくりして目を見開いたね...
そこに俺がいたなんて、夢にも思ってなかったでしょ?
早々にバレちゃって、困ってるの?
......俺は、じっと翔を見つめた。
「彼女...遠藤とは、何もないよ...
変なとこ見せちゃって、ごめんね...俺に隙があったんだ...雅紀がいたなんて知らなくって..」
「俺が知らなかったら、隠してるつもりだったんだ??」
「......雅紀...」
こんなこと言うつもりないのに///
嫉妬して、不安になって、泣いて...
挙句の果てには、恋人の不貞をなじってる///
俺、最低だな...
でも、もう止まんないんだよ...
「翔は、俺と違って、何でもできるし、何でも持ってる。頭もいいし、家だって金持ちで。こんなマンション簡単に住んじゃって。難しい大学にも当たり前に入って...
仲間に囲まれて、女の子にもモテモテで...ホントは俺なんか、一緒に居ない方がいいんだ...俺といたって..」
「雅紀!!」
「......」
低く強い翔の声で、俺は我に返って、翔の顔を見た。
...怒ってる...怖い顔して、俺を睨んでる...
「俺なんか、なんて言うな!!」
「......」
「俺は、雅紀だけが好きだ。雅紀だけいればいい。...だから、居ない方がいいなんて...そんなこと言うなよ...」
怒ってた顔が、だんだん泣きそうになった。