第14章 すれ違う中で
トイレに続く通路で、何やら聞こえてきた、男女の声...この声って...?
俺は、廊下の曲がり角から、先の様子をそっと覗いた。
「もう...飲み過ぎだよ~、遠藤...」
「えんどぅ~じゃなくって~、な~つ❤って呼んでよ~」
「ほら、もう行こうよ...」
酔っぱらった女の子を部屋に連れて行こうとしてるのは、まぎれもなく翔だった。
そして相手の子は、病院の窓から見た、あの子...
今日飲みがあるなんていってなかったのに///
「ねえ~...翔くん..二人で抜けちゃおうよ~」
「はあ?ダメでしょ?そんなの...大体お前の誕生会なんだし...」
あの子、誕生日なんだ...
心臓がドキドキした。
恋人の浮気現場に遭遇した彼女?彼氏?の気分...
「ねぇ、翔くんは〜、何で彼女作んないの〜?」
「どうでもいいだろ?そんなこと...」
....聞いてちゃいけないの、分かってるけど、俺は、そこから動けなくなった。
「どうでもよくないよ!...だって、私は..」
「ほら、行くぞ//」
それ以上言わせまいとしたのか、途中で彼女の手を引いて帰ろうとした翔の、
その手を引き寄せて、彼女が唇を重ねたのは、ほんの数秒の出来事だった。
慌てて彼女の身体を押して離れた翔に、
「好きなの!分ってるくせに...」
「...遠藤...」
......俺は、翔の返事を聞かずに、その場を離れた。
胸が痛くて、息が苦しくなる...
自分の飲み会の席にも戻らず、俺は足早に店を出た。
.........翔が...
考えてみたら、当たり前だ、
翔は、優しい、
しかも、あんなにカッコイイ、
頭も良くて、
礼儀正しくて、
明るくて、
気遣いもできて、
......女の子が、ほっとく訳ないんだ...
.........どうしよう、俺...