第14章 すれ違う中で
「翔くん!おはよ〜!何朝からにやけてんのよ〜?やらしいなぁ...」
「はあ〜?にやけてないから///」
「私だからよかったけど~?他の人が見たらドン引きだよ」
「うっせっ...」
遠藤奈都は、今まで俺の近くにいた女子とは少し違っていた。何て言うか、男みたいに大雑把で、女らしいという言葉とは一番遠いところにいる気がしてた。
ぶん殴られるから言わないけど...
「今日、503でしょ?細胞生物学!
あの教授さ~ぶつぶつ言ってて、聞き取りにくいんだよね~
いっつも」
「あ~...そうだよね..」
「今日は思い切って『聞こえませぇ~ん!!』っていってやろうかな~」
全く、いつもながら威勢がいいよ、ホント...
「俺、近くに座るのや~めよ♪」
「もう!!なんでよ~同志でしょ~?」
彼女が振り上げた拳を避けながら笑った。
正直、男子校だった俺は、こんな風に自然に女の子と話すのは初めてに近かった。
ちゃんとした女友達としては、1号と言っていいのかな?
...まあ、彼女の方が、俺のこと友達の一人って思ってるかどうかは分からないけどね。
「櫻井~!!今朝は同伴かよ///」
後ろから追いついてきた同じクラスの奴等に一気に囲まれて、俺の周りは賑やかになった。
高校生活は、正直楽しかったと言えないことも多く、
だから今、こうして普通に接してくれる友達との時間は、楽しかった。
だから...
っていう訳じゃないけど、
気付かなかったんだよ...雅紀が、そんな俺の姿を見ていたこと。
別に悪いことをしていたわけじゃないけど。
...雅紀が、どんな気持ちでいるか、
そんなこと、考えることもしなかった...