第10章 大人の階段昇る
雅紀が風呂から出てきた。
さっきより心なしかすっきりした顔して、
笑顔で俺のこと見ている。
「雅紀...今度は俺が、髪、乾かすよ」
「え~っ、いいって、自分で..」
「いいから!ここ、座って!早く...」
さっきとは逆の態勢で、
俺は雅紀の髪にドライヤーをあてた。
さらさらで、綺麗な髪の毛...男の俺でも羨ましいくらいに、ホントに、綺麗で...
今まで、身を任せて髪を弄らせていた雅紀が、
不意に俺の手を掴んだ。
「あっ...」
驚いてドライヤーを落としそうになった。
「何すんの?驚くじゃん..」
すると、何も言わず雅紀が、そのまま俺の手を引き寄せて、その指先にキスをした。
「......」
何も言わない俺...
雅紀は、何度も俺の指に唇を着けたあと、身体を半分振り向けて、俺の手のひらを、自分の頬にぴったりと着けた。
「雅紀...」
「翔...好きだよ...」
...俺の頭の中に、いつもは触れないスイッチがあるのだとしたら、今まさに、それが、押された...
そんな瞬間だった。
俺はそっと、雅紀の身体を抱き締めた。
雅紀は、俺の胸に頬をつけて、目を閉じている。
そんな彼が、胸が締め付けられるくらいに可愛くって...愛おしくって...
俺はそのまま、雅紀の顎を上向かせ、
見つめ合った潤んだ瞳に、
「目...閉じて..雅紀...」
と言った。
雅紀は、言われるがままに、ゆっくりと瞼を下ろした。
少しだけ震えるそれを見ながら、
俺はゆっくりと、雅紀の唇に自分のそれを重ねた。
......身体中の全神経が、その場所に集中して、雅紀を感じようとしてるみたいだ...