第8章 イノセント
こうして、俺は何とか翔の気持ちに
少し、近付くことが出来た。
顔の痣はまだ残っていたけど、
腫れも引いたし、
肋の骨折とひびは、時間がくれば治るし。
何より、ずっと遠かった、
欲しかったものが手に入ったんだ。
こんな怪我なんて、
どうってことない...
退院の日。
翔は、迎えに来てくれた。
親も来ていたけど、
翔が来てくれた!!もう、それだけで、俺は、けっこう舞い上がってた訳で...
翔のお父さんに何度もお礼を言ってる母ちゃんに、
「俺さ、翔と帰るから!
荷物だけ持って帰ってよ!
翔、行こうよ♪♪」
慌てた母ちゃんは、
「何言ってんの、雅紀。今日くらい、
家で休んだ方が....」
「休んでたって同じだろ~?
大丈夫だよ!スタバ行くだけだから!」
俺は、半ば強引に翔の肩に凭れて、
親に背を向けて歩き出した。
「...いいのかよ?」
心配そうな翔に、
「いいのいいの♪
...あ、痛ててて///」
俺は、傷が痛む振りして、
翔にわざと凭れかかった。
「ほんとかよ?」
そう言いながらも、翔は穏やかに笑っていた。
直ぐ側で、彼の髪の甘い匂いがして、
ドキドキしながら歩く俺は、
きっとすげ~幸せそうな顔してるんだろうな...と思った。
そして、そう思った俺は、
何だか嬉しくて笑った。
「何が可笑しいんだよ~...」
翔は、そんな俺に少し唇を尖らせた。
俺たちは病院から程近い、
スタバに入った。
「何飲む~?」
「俺は、モカフラぺチーノ..翔は~?」
「じゃあ俺は~...キャラメルフラぺチーノにしよっかなぁ~...」
「翔..か~わい♪♪」
俺がそう言うと、翔はパッと赤くなって、
「うっせ///」
と言った。