第1章 はじめまして太陽さん
(あ、そうや…ノート返さへんと…)
日菜子がいなくなったのを確認して、席に座っている千歳くんの大きな背中を軽く叩いた。
「ん?どぎゃんしたと?」
(ど?どぎゃ…??)
よくわからなかったからスルーして、こちらの要件を話した。
『あ、千歳くん、この前私にノート貸してくれたやろ?それ返そう思うて…ほんまおおきに。』
「あぁ、全然気にしなくてよかよ。
…って、あれ?」
『???』
パラパラっとノートを開いた千歳くんが驚いたような顔をしていた。
「さん…俺が授業休んでたところ、書いてくれたと?」
『あ!』
そうだった…結構前に書いたから忘れてた…!!
『ご、ごめん!!勝手なことしてもうて…!!』
「い、いや!!全然よか!むしろ助かったばい。」
千歳くんがふわっと笑ってくれた。
(あ、この笑い方は初めて見たかも…)
いつもは大人っぽい笑い方だけど、今のは優しい笑い方だった。
『な、ならよかった!!
うちもノート貸してもろたし、お互い様や!』
「いや~…これはさすがに悪かねぇ…」
『えぇよ、えぇよ!
ほら、次の授業始まるで?』
私がそう言うと、すぐに予鈴がなった。
「ほんなこつ、ありがと。」
そう言って彼は前を向いた。