第1章 はじめまして太陽さん
千歳くんが壁打ちしてるのを、私は目撃してしまったのだ。
こんなところでやるなら部活行けばいいじゃない、そう思った。
でも、彼はすごく真剣な目をしていた。
まだ転校してきて一ヶ月とちょっとだけど、はじめて見た。
しばらく、私はそこに立ち尽くしていた。
まだ春なのに汗だくになっている彼を見て、何かしてあげたい。そう思った。
テニスコートからちょっと離れたところに自動販売機があったはずだ。
差し入れくらいなら…
そう思い、早足でその場所に向かった。
水かスポーツドリンクかで悩んだけど、私はスポーツドリンクをもって千歳くんがいるテニスコートに戻った。
(あ、まだやってた…)
フェンスの外にあるベンチに、買ったスポーツドリンクを置いて、私はすぐさまその場を去った。