ふらたーなる *Fraternal* 【気象系BL】
第2章 Dear ―Doctor Call Ⅱ ー
『え?俺、処方してないよ?
だって、潤、ここんところ落ち着いてたしコントローラーだってしばらく必要としてなかったもん。
ちょっと待って、カルテ見てみる』
しばしの沈黙とその代わりに聞こえてくるキーボードを叩く音。
時々混じる翔くんの『あっ』とか『えっ』とか言う声が聞こえてきて嫌な予感がひしひしと伝わってきた。
「翔?カルテどうなってる?」
なんとなくパニクってそうな翔くんの意識をこっちに向けさせたくて珍しく呼び捨てした僕にはっと息を呑むような音が聞こえて…。
一呼吸置いて翔くんの声が受話器から流れてきた。
「あのね…あいつ…自分で処方してる。
日付は…あぁ…っと…。
智兄がそっちに行った直後だ。
智兄がそっちに行く少し前からあいつ結構キツイ勤務してたからなぁ…。
でも…これはダメだわぁ…」
翔くんの言うことはもっともで、僕たちは医者だから処方箋を書くことができる。
つまり、処方薬を手に入れることが出来るわけだ。
処方薬の中には睡眠薬や医療用の麻酔、麻薬もある訳で…。
そこには厳然たる倫理観が必要なんだ…。
とても他人には言えないような関係を持っている僕たち兄弟だけど…そこだけは譲れない。
だから…調子が悪くて薬が必要なときはちゃんと兄弟の誰かに診てもらって処方するって決めてるんだ…。
潤くん…約束破ったんだ…。
その一点が頭の中をぐるぐると巡った。