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そうして君に落ちるまで

第7章 寵愛(ティキ)



◆◆◆

「ただいまハニー」

カチャリと開くドアの音で目を覚ましたところで
それまで自分が眠っていたことに気づいた。

我ながら油断しすぎではないかと呆れてしまうな…

身体の自由も効かず、空しか見えない窓を眺めているしかなかったので仕方ないと自分に言い聞かせる。
体力つけなきゃだし。

ティキはワゴンで2人分の食事を運んでくるとベッドの隣にそれを止めた。夕食はトマトのチーズリゾットとステーキのようだ。
正直、彼が運んでくるご飯は全て美味しい。

「肉とリゾット、どっちから食べたい?」
「…肉…」

ここにきてから1週間、指はなんとなく動きはするが力が弱く、物はまだ握れない状態だ。楽しそうな顔のティキが口元へステーキを運んでくる。

私と自分と、交互に動く腕をぼーっと眺めていた。
顔がいいな。

この1週間、彼は本当にただ私を養っているといったところだった。
食事を与え、身の回りの世話をして、話をしながら眠りにつく。
まるで兄のように、昔からの恋人のように、ペットを可愛がる主人のように。

「ティキはいつか私に飽きるのかね。」
シャワーを浴び、まだ少し髪の濡れたティキが布団の中へ入ってくる。風邪をひくといっても大丈夫と答えるだけでおわるのもいつものことだ。

「かもな。でも、少なくても今は楽しいよ。」
そう言って私の髪に触れると優しく撫でた。

「他のノアからは何か言われないの?」
「別に。そもそも言ってないし。オレらは家族だけど、でも家族だからってお互いのことなんでも話すわけじゃないだろ?」
「…そうだね」

少しだけ……いや、とてもホッとした。
もしも他のノアが私のことを知ったら、きっとこんな呑気にベッドには寝ていないだろう。

何らかの方法で教団の情報を喋らされるかも知れない。
普通に殺されるかもしれない。
少なくとも今より酷い扱いを受けていることだろう。


「相手がオレでよかったね?」
見透かすようにティキが微笑む。
「…そうだね。」
どうしたら彼は私に飽きないだろうか。
彼が私に飽きたら、きっとそのときが私の最後だろう。



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