第7章 寵愛(ティキ)
一口、また一口と、彼女は俺が与える食べ物を素直に口に含んでいく。
なんだか親鳥がヒナに餌を与えているようで、俺がもし何も与えなかったら体の自由も効かないまま彼女は死ぬのかと想像するとなんとも言えないぞくぞくとした気持で満たされた。
そんな事を考えていたからか、止まってしまった手に気づいた彼女はちらりとこちらを伺ってくる。
「ティキ?」
「あぁ、わるい。」
まだ少し、俺への警戒は残っている。
それでも、こうして俺に頼るしかない圧倒的に弱い存在。俺の命の恩人。
なかなかこれは癖になりそうだ。
「ご馳走様。」
「水は?」
「…じゃあ」
コップを掲げるとコクリと頷く彼女は、もうだいぶ警戒も解いているようで。今度は毒味を見せなくとも自分の口に水が運ばれてくるのを素直に待っている。
頭を支えてやり、ゆっくりと水を飲ませる。
あぁ、いいね。
ここで口づけをして水を飲ませる事だってできる。
そのまま犯すことも、もちろん殺すことも。
そうしたらどんな顔をするだろうか?
好奇心はあるけれども、それをするにしてもまだ早い。
もう少し、この感じを楽しみたい。
彼女が俺を信じ切って、俺からもらう全てになんの疑いもなくなくなったら。そうしたら、考えよう。
「あまり時間はないかな…」
「?何?」
「いや。これから俺がいないときの簡単な身の回りの世話はレベル1置いとくからそいつにやらせるといい。殺さないようにちゃんとしておくから。」
まさか風呂やトイレまで俺が相手をするのは嫌だろう?と言えば彼女はゆっくりと頷く。
「俺は全然構わないんだけどね。」
「…遠慮しときます。」