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そうして君に落ちるまで

第6章 まずは触れてから考えよう2(コムイ)














「沙優さん!」


ああ、困った困った。


パタパタと近づく足音。昨日からずっと考えていた通信班の彼の声が聞こえたので振り返れば、案の定にこやかな笑顔が近づいてくる。


「それ、大変ですね。持ちますよ。」

「ホント?ありがとう。じゃあ半分。」


出来るだけ平静を装って抱えたファイルの山を向ければ、彼は半分以上を受け取る。


「それ半分より多い。」

「男なんで。それにせっかくだから良いところみてもらいたいんで。」


にこ!と笑うその笑顔に、思わず顔が赤くなるのを感じる。なんだこの子。眩しい。


「…それは…どうもありがとう。」

「オレのこと、ちゃんと意識してくれてます?」


軽やかな声に今さっき逸らした視線をそちらへ向ければ、その目は前を向いていて、視線が合わさることはない。

「そりゃぁ…まぁ…。ていうかなんか私の方がキミより余裕ない気がする。」

「えっ」

瞬間、バッと向いたその視線は、にこやかでも爽やかでもなく、少し驚いているようで。

…よく見たら、耳が少し赤い…?


「あー…いや、そっか…いや、あの、オレもそんなに余裕ないですよ。」

「え?」

「いや、昨日も今も、あのまんま気まずくなるのは嫌だったし。恋人どころか友人ですらなくなるのは嫌だったんで…。」

結構頑張って話してます。

そう言う彼の目は優しく、綺麗な青に思わず見惚れる。そうか、そうだよね。私よりずっと悩んだはずだ。事実、彼が軽い空気で話をしてくれるからこそ、まだ落ち着いて話ができている。

「ありがとう、嬉しい。」

思ったままを口にすれば、パチリと瞬きをした彼は「あーーー」っとファイルに顔を埋める。


「ダメだ恥ずかしくなってきた…ってかお礼とかやめてください。」

「えっまってそこで照れないで私も恥ずかしいから。」


大の大人がこんなに赤面しあってるのはどうなんだ。

けれどもちっとも悪い気がしない。ああ、なんだこれ。勘弁してよ。すっごい楽しいんですけど。


そんな風に話していたら、あっという間にラボについていた。




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