第6章 まずは触れてから考えよう2(コムイ)
「好きです。オレと付き合ってください。」
まっすぐとしたその言葉に思わず目を瞬いた。
彼は通信班の、4つ歳下の男性だ。
業務連絡に加え、最近会うたびに一言二言話す仲と言ったところ。
親密と言うほどではないがまぁ、仲良しみたいな?
まさかそんな人から、人気のないところで手を取られ、こんなまっすぐな目で告白をされるとは思わなくて。
正直顔も良いし満更でもない。
というか
「すごく嬉しい…」
思わず口からこぼれた言葉に、瞬間、彼の顔がパァっと明るくなった。
なんだこの人…かわいいな。
…でも
「でも、ゴメンね。ずっと友達だと思ってたから…多分これからも。」
握られている手に僅かに力が入れられる。
そうですか…と視線が落ちるその目は綺麗で、ああ、でも、室長の方がまつ毛長い。
「……やっぱりコムイ室長と付き合ってるって本当ですか…?」
「ううん。あれデマなんで。」
一度、室長の部屋から手を繋いで出てきてしまったせいで、その場は適当に誤魔化したけれど、そんな噂が広まっていた。
アレからも、2人きりになるとたまにお互いの熱を求めた。
というとアレだけど、実際は抱擁してキスをするだけ。それ以上にはならず、かと言って「こんな事やめよう」とも「付き合おう」ともならないもんだからズルズルとそんな関係を続けている感じだ。
「じゃあ」
いつの間に下がった自分の視線に気づいて顔を上げれば、じゃあまた、口説いてもいいですか?とさっきよりも近づいた声が耳に入る。
えっ
「付き合ってないなら、今から異性として意識してください。オレ、頑張りますね。」
「ちょっ」
気づけばその胸に引き寄せられていて、頭をポンポンと撫でられる。
「じゃあ、また。告白、聞いてくれてありがとうございます。」
軽やかに手を振り去っていく彼をポカンと見つめる。なんだアレ…凄い女慣れしてる感。でもいやな感じはちっともなくて、西洋の、というか最近の若者はみんなそうなのか?と思う程。
「はー」
心臓がバクバクしている。落ち着け私。
室長と比べてどう思った?
なんてことが浮かんだけれど、深く考えたくなくて首を振った。