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そうして君に落ちるまで

第3章 まずは触れてから考えよう(コムイ)





「はぁ…」

さっきの態度はなんだ…
この歳にもなってシカトだなんて。

ラビ越しに視界に入った室長の視線を思い出す。

こんな、幼い子供の様に、あからさまに怒って、その癖声をかけてもらえないだろうかなんてとんだ構ってちゃんだ。しかもその根本の理由を、自分ではまだ認められないでいる。


私は室長のこと、異性として好きなのかな。


改めて自問すると、酷く間抜けな疑問に思えてきて恥ずかしくなる。もしあの触れたいと思った気持ちが恋心からくるものではなかったら…そう思うと自分が情けなくなった。


「はぁ…」

「ため息つきすぎだろ。幸せ逃げんぜ?」

一度は断ったのに机の整理を手伝いに来てくれたラビの存在を一瞬忘れていたけれど、「そりゃつきたくもなるでしょ」と自然に机を指差せた私には良くやったと拍手を送りたい。

「悪かったな。俺からもみんなによく言っておくから…」

「あ!班長だっていけるんじゃないか?って言ってたじゃないすか!」

みんな手元の作業に飽きた様で、近くを通りかかった何人かがわらわらと机の周りに集まってくる。

「私は室長と真面目に仕事してたのにずいぶん楽しそうにしてたようで。」

「悪かったって…お前の机は特別壊れにくい様に丈夫なやつ作るから。」

「また何かある前提なのな。」


ニヤニヤと笑うラビに一同が苦笑いをする。
今後、似たことが起こるのか起こらないのかと言われたら間違えなく起こると言い切れるので誰も否定ができないのだ。


そんな風に談笑していれば、コツコツと近づく音がする。あぁ、今いい感じに忘れられてたのに…。


振り返るが早いか、腕を掴まれたことに気づくのが早いか。足音が止まったと同時にそちらへ身体を引き寄せられた。

「楽しそうなとこゴメンね〜!沙優くん、昨日の資料見つかんないから手伝って?」

「えっわっ」

返事をする前にいやー悪いね〜と引きずれていた。
掴まれた腕には力が込められていて少し痛い。

ずかずかと室長の部屋へと入り、昨日空けられた空間に簡素につけられた仮のドアの鍵が閉められると、少し乱暴に唇を合わせられた。







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