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そうして君に落ちるまで

第3章 まずは触れてから考えよう(コムイ)






「あちゃー昨日の騒音の原因はコレかー」

見にくれば良かったさーと言うラビに苦笑いを返す事しかできない。

「言っとくけどこれ、ボクじゃないからね?」

「マジで?珍しい。本当なん?沙優。」

「ほんとだよ。室長は無実でした。」

まさか自分と密室で口づけを交わしていたなんて事は言わず、通りすがりの彼女はからりと答える。

「おかげさまで私のデスクはお陀仏だよ。」

「あーさっき見てきたけどやばかったな。手伝うか?」

「ううん。ありがとね。じゃあ行くから。」

ラビににこりと微笑むとダンボールを抱え直し、こちらには一目もせず立ち去っていった。

「………コムイさ、なんかあったろ?」

しかも1日2日じゃなくてだいぶ前からと、チラリと目だけをこちらへやる彼はさすがはブックマンjrと言ったところか。全く嫌なところもよく見られているようだ。

「…ボク嫌われちゃったかな?」

ポソリと言えば再び翠の瞳はこちらへ向いてから彼女の後ろ姿へと写す対象を変える。

「そんな風には見えなかったけど…ちゃんと話したん?」

「話したような話してないような。」

一回り以上歳下の青年になんさそれはと呆れ気味にため息をつかれてしまうとは。細かい事を聞いてこないあたりはさすがと言ったところで、僅かに感謝する。


なんて言うか、彼女に触れた事は誰にも知られたくなかった。

欲にまみれて触れた事が周知されるのに恥を感じるというよりかは、自分がさらけ出した感情の全ては、彼女だけに知っていて欲しい気がしたから。


「コムイさ、ブックマンの俺と似てるさ。でも、同じじゃないから。少なくとも沙優には隠す必要ないんじゃね?」

「…ラビ、実は何あったか知ってるの?」


思わずパチクリと瞬きすれば、そんなんじゃないさーとひらひら手を振り彼女の元へと行ってしまった。

手伝いに行った彼にお礼を言っているのであろう彼女の笑顔は昨日見たものとは違う、いつもの、ボクの部下だ。


なら、昨日の彼女は、ボクの何だったのか。

というかなんで怒ってんだろ。


分からない。
分からないけれど、彼女にさり気なく触れるラビの手に、ラビへ向ける彼女の表情にどうしようもなく目がいく。


ああ、ラビ、その手にはボクが触れていたいんだ。

誰か彼のことを呼びに来ないだろうか。






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