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そうして君に落ちるまで

第1章 距離感調節中(リンク)







「リンクさん」


そんなやり取りをしたのにも関わらず、1ヶ月ほど経つとそんな風に呼ばれるようになった。

「これ、リンクさんの通信機直りました。」

「…どうも。」

いつからだろうか。
明確にはわからないが3日ほど前まではまだハワードさんと呼ばれていたはず。

少し慣れたところだったので、彼女にファミリーネームを呼ばれるのはどこかストンとこないというか、違和感を感じる。


「沙優さん、結局リンクのことそっちで呼ぶことにしたんですね。」


こういう時、ウォーカーは便利だな。
先日もそうだが、抱いた疑問をそのまま確認してもらえるは至極楽だ。


「あーーうん、そうなの、だってハワードさんっていうとみんな一瞬『誰?』って顔するし『お前たちそんなに仲良いの?』ってめちゃくちゃ楽しそうに突っ込まれるっていうか、からかわれるんで…変な噂立たされるとリンクさんにも迷惑かかるだろうし変えようと思って。」


大きくため息をつき、「私とそう言う感じなのか〜?とかそう言うことを言われたらそいつ絞めるんで、言ってくださいね。」と、手を顔の前で合わせながらそう言う彼女は、すでに何人かに制裁を下しているのだろうと思った。


女性の少ない教団内、まして科学班にとっては紅一点である彼女が、突然来た中央庁の人間を他とは違う呼び方をしているのは面白くないのだろう。彼氏の有無を気にする父親が沢山いるようなものだ。


「わかりました。私も軽率でしたね。」

「えっ?いやハ…リンクさんは何も悪くないですよ。」


みんなが疲れてテンション上がってるんです。と彼女は再び大きなため息をつく。よく見ると目のクマが以前見た時よりも濃くなり、髪も少し痛みが目立つように見える。


「ちゃんと休んでます?」

「うん〜最近ちょっと立て込んじゃってね…」

「僕にできることなら手伝うんで呼んでくださいね。リンクもセットで付いてきますし。」

「ウォーカー?」

「ふふ、ありがとう。じゃあなんかあったら呼ぶね。」


弱々しくも嬉しそうに笑う彼女は、手を振りながら去っていった。


「……ハワードさん、残念でしたね。」

「………彼女に言いつけますよウォーカー。」


監視対象は冗談じゃないですかとむくれると食堂の方へ足を進める。


なるほど、これは面倒だ。






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