第2章 ifの願い(コムイ)●
「……」
「……」
僕も、アレンくんも、勿論そこに横たわる残骸も、誰1人として言葉を発しなかった。空間にはパチパチと機械の断末魔がだけが響いている。
腕を元に戻し、店内が月明かりだけが照らす暗闇へと変わると、彼はコツコツとこちらへ近づいてきた。
「…これ。彼女から預かったものです。」
懐から静かに差し出された封筒は汚れひとつない。
「……彼女、怒ってた?」
「……いえ。」
外で待ってますと彼はそのままドアから出て行った。
手紙を見つめる。
隅に小さく書かれた文字は紛れもなく彼女のものだった。
僕らの敵。
倒すべきもの。
それから発せられた声を彼女のものだと認識したところで、その先を考えることは拒絶された。
白いその封筒を、ゆっくり丁寧に開いていく。
「………なんだよこれ………」
ありがとう。
好きでした。
「…っなんで…」
なんで過去形なんだ
なんでこんなもの残したんだ
なんでお礼なんかするんだ
なんで
なんで
なんで僕は彼女に何もしなかったんだ。
熱くなった目から溢れる涙は止まる術を知らず、手紙へとシミを作っていくだけだった。