第5章 言えなかった
ついさっきまで、デートだデートだって浮かれてたのがもうとっくに昔のことみたいに感じる。
『はぁ………』
ため息ついたら幸せが逃げちゃう?
そんなことしなくたって、どんどん逃げていってるよ……。
『はぁ………』
「あーもう、うるさいなぁ」
『有馬……?』
「それ以外の誰に見えんだよ」
ああ、ちょうどよかった。
『有馬、一緒に帰ろ』
「はあ?なんで?………彼氏は?」
『先に帰って、だって』
「………ふーん。まあ、いいんじゃないの」
よくわからない答えの返し方だけど、いいってことだよね。
よかった。
だって、ひとりじゃ寂しすぎる。