第8章 猫は紅い血に染まる
「へー心配してくれてたんだー」
オレのベッドの上で寝ながらニヤニヤと笑われる。
「べ、別に心配とか.... してない」
ふいっと横を向けば、そっと手を握られる。
「ありがとう.... 一松くん」
ベッドから聴こえてくる言葉と小さな手のひらの熱が胸を締め付ける。
....よかった、今回は鈴音を守れた。
おそ松に凄まれたときのことを思い出す。
怖かった。
それはおそ松の特殊な力のせいだ。
畏怖の念を増長させる力、まぁ当の本人もなかなかに怖いんだけど。
怖くて堪らなかったけど、鈴音を助けたかった気持ちも強かった。
結局助けられなかったけど....
自分の無力さを再度思い知らされた。
あんなに酷くされて、死ぬほど痛かったろうに助けてあげられなかった。
逆に助けられたのは、クソ松とオレの方だ。
鈴音の強い瞳の光に助けられたんだ。
「.... ごめん....おそ松の時.... 助けれなかった.... 」
小さな手のひらにそっと手を重ねれば、にこりと微笑む愛しい顔。
「ううん、庇ってくれて嬉しかった.... ありがとう」
強くなる手のひらの力が、あまりにも暖かすぎて.... ぽろっと涙が零れた。
こんなクズでどうしようもないオレにありがとうなんて、もったいなさすぎる。
「泣かないで一松くん、一松くんが泣いてたら悲しいじゃん」
細い腕を伸ばして、オレの涙をすくう。
鈴音は、何処までオレを救ってくれるんだろう?
今も、昔も....