第28章 初雪は淑女と共に
「カラちゃん!あれ、あれに乗りたい!」
心の目眩から、レディが俺を連れ戻す。
いったい何故目眩など起こしたのだろう、少し無理をしすぎたからだろうかなんて。
「よし、アレだな!ふふふん、このカラ松華麗に乗りこなしてみせるぜ!」
まさに俺の為に作られたであろうゴージャスなその乗り物とは!
「凄い!このメリーゴーランド二階建てだよ!」
はしゃぐレディの声をききながら、俺はカッコイイポーズを決めたままメリーゴーランドを見つめる。
おお、ワンダホーでビューティフォーだ。
二階建ての豪華絢爛なメリーゴーランドは、辺りの暗さを塗り替えているかのように光り輝く。
暗闇の中でさえも、目立つ屋根の色はレディと昼間見た空のように美しい。
そのあまりの美しさに、レディの手をひきつつ近寄ってよく見てみれば目を見張った。
金色の手すりに、白馬、そしてその白馬が身にまとっている馬鎧さえも金色で美しい。繊細な装飾は、手を触れてよいものか戸惑ってしまうほど。
そんな美しい白馬がひく、馬車の色もまた屋根とお揃いの美しいターコイズブルーで、所々に宝石のように埋め込まれた石は本物の宝石のように見えた。
「凄いね!こんなステキなメリーゴーランドみたの私初めてだよ!」
レディの目の中で光り輝く乗り物は、間違いなく俺の見た物の中でも1番といっても過言ではない。
「あぁ、俺もこんなに素晴らしいメリーゴーランドを見たのは初めてだ」
ふとでたセリフにレディの俺を握る手が少し力を帯びる。
「本当に!?じゃあ、私と一緒だね!」
あぁ、本当になんて...。
締め付けられるように胸がきゅうっとする。
こんな事で、そんなふうに君は笑う。
小さな事が、大きい事に感じられるようになるのはレディ君のせいだ。
ふっと自然に出る笑み、俺の瞳の中に映るのはこの素晴らしいメリーゴーランドではなく嬉しそうに微笑むレディ。
「お揃いだな、レディ」
「うん!」
胸の奥が温かくなって溶けてしまいそうだと、本気で思ってしまう俺がいた。