第8章 猫は紅い血に染まる
「.... アル」
オレが、名前を呼ぶとその場に膝をつくアル。
「んっ....いいこ」
アルから鈴音をおろして、横抱きにする。
猫の毛並みみたいな、ふあふあの黒いクイーンサイズのベッドに、そっと鈴音を沈ませる。
ボンっと後ろから音が聞こえて、アルが普通サイズより少し小さな黒猫になってオレの肩によじ登ってきた。
にゃーっ?
「....大丈夫、眠ってるだけだから」
アルがトンッとベッドに降りて、ペロッと鈴音の頬を舐めた。
にゃ....
金色の瞳が揺れている。
「アルは心配性.... 本当に大丈夫だよ」
よしよしと頭を撫でればにゃあっと嬉しそうに一声鳴いた。
チリンッ
水琴鈴の音がなる。
にゃあっ!
「アルもこの音好き.... ?」
首もとのチェーンを指で弄べば、チリンッチリンッと清んだ音が部屋に響く。
それにしても、こんなゴミクズのベッドに寝かされるなんて鈴音も運がないよね。
いやそもそも、オレなんかに目をつけられるあたりからして運がないか....
そっと鈴音の長い髪をすくう。
オレの選んだラベンダーのシャンプーの匂いがふんわりと香る。
後、チェリーブロッサムの甘い香り。
やっぱりもうちょっとだけ、殺っちゃえばよかったのかもなんてうっすらと思った。