第8章 猫は紅い血に染まる
「そういえばさ.... 」
トド松が、アルを撫でながら口を開く。
「一松兄さん、今回力暴走しなかったね.... 」
目を見開き、手を見つめる。
.... いつも暴走する力
あまりに強大すぎる力は、時として破滅へと導く。
コントロールできない力は、ただのゴミでしかない。
.... チリンッ
マントを外した為に鳴るのは、いつも首につけている淡い紫色の錆びた水琴鈴。
「....それ、まだ持ってたんだ.... 」
トド松は少し寂しそうにそう言った。
「....宝物だから」
チリリンと涼やかな心地よい音が、オレの動きに合わせて鳴る。
「....鈴音は預かっていくから」
くるりと後ろを振り返る。
自室に帰るとわかったのだろう、アルがオレの横にすっと寄り添う。
「一松兄さん.... 僕は.... 」
「.... トド松」
返事を言う前に、トド松の言葉を遮る。
何百年も一緒にいるから言いたいことなんてわかるんだよ....
「おそ松兄さんとかクソ松のが先かも知んないけど、本当の先は僕だから.... 」
それだけを言い残して、左足でコンコンと二回地面を叩く。
ふっと景色がかわって、自室の黒い絨毯の感触がオレを迎えた。