第8章 猫は紅い血に染まる
「.... アル」
オレが名前を呼ぶと、アルはオレの横にすっと戻ってくる。
「....鈴音を、乗せてあげて」
オレのマントを持ったまま気を失ってる鈴音
フィブラを外して、そのままマントに包み込んでアルの上に乗せる。
アルは背中に鈴音を乗せた。
「....いいこ」
そう言って大きな頭を撫でてやると、金色の瞳を三日月みたいに細くしてゴロゴロと大きく音をならした。
「....トド松.... 立てる?」
そっとトド松に手をさしのべる。
つい、やり過ぎてしまった。
「....ごめん、一松兄さん」
おずおずとオレの手をとるトド松
「.... オレもごめん」
鈴音が止めてくれて良かった....
我を忘れて、大切な弟を傷つける所だった。
ぐいっと手を引き寄せれば、目をうるうるとさせる弟
泣き虫だな、昔から
「トド松.... オレもう怒ってないから」
「.... いや、怒って当然だよ。僕は同じ過ちを繰り返すところだった」
ぽろっと涙が一粒こぼれる。
それをアルが大きな舌でベロンっと舐めた。
「ふふっ、やめてよ、アル、くすぐったい」
少し笑いながら、そう言ったトド松にホッとした。
オレの怒りと同調していただけで、元々アルもトド松のことが好きだ。
アルの背中で眠っている鈴音が穏やかな顔をしているように見えた。