第8章 猫は紅い血に染まる
私はフラフラになりながら、起き上がる。
「そんなこと、誰も頼んでねぇ.... 誰かが傷つくのなんか.... みたくねぇんだよ.... 」
私はゆっくりと一松くんに近寄ると、後ろから抱き締めた。
「だから.... やめて.... お願い....私は大丈夫.... だから 」
すごく落ち着く匂いが肺の中いっぱいに広がった。
優しい懐かしい匂い....
一松くんの香りだ。
「鈴音.... 」
ゆっくりと左手を下ろす一松くん、トド松くんもそれに合わせてゆっくりと地面に落ちていく。
「ありがと.... う.... 一松く.... 」
体の疼きも熱さも残したままゆっくりと意識を失う。
熱病にうなされたみたいに、深い深い眠りの中へ
そんな時に一瞬、トド松くんの声が耳に届いたような気がした。
ーーごめんーーー
その一言が私の眠りを誘うみたいだった。
一松くんのマントを握り締めながら、ずりずりと下へと落ちていく。
そんな私を満月と桜が見下ろしていた。