第8章 猫は紅い血に染まる
「それ.... 本気でいってる?」
一松くんの言葉とともに大きな猫こと、アルがトド松くんに牙を向ける。
「....一松兄さん、僕は人間が嫌いなんだ!知ってるでしょ?!なんで?なんで?なんで?」
トド松くんの過去に何があったのかなんて、私にはわかんないけど....
うっすらと涙を浮かべる顔は嘘をついてるように見えなくて
桜がトド松くんの涙を悲しんでるみたいに、ひらひらと何枚も何百枚も落ちてくる。
「.... だからって鈴音にこんなことしたって、トド松の心は癒えない」
「そんなこと.... 僕だって.... わかってる.... 」
トド松くんの瞳にオーキッドピンクが宿る。
「でもこれ以上僕の心をかきみだされるのは嫌なんだよ!!!」
トド松くんは瞳孔を開きながら、右手で人差し指をくいっとあげる動作をするとバチっとピンク色の雷撃がはしって、アルを怯ませる。
「.... 頭冷やせトド松」
一松くんがぼそりとそういった後に、トド松くんが軽く後ろにぶっ飛ぶ。
.... やめさせないと....!
「や.... めて!一.... 松くん!」
私は必死に一松くんの名前を呼ぶ。
一松くんは左手を差し出して上にくいっとあげると、ぶっ飛んだトド松くんを宙に浮かせる。
「....いくら弟でも許せないことだってある」
ぶんっと下に左手を勢いよく降り下ろす、一松くんに私は叫んだ。
「やめろっつってんだろうが!きこえねーのか!」
ピタリと動きが止まる。
まるで時間が停止したみたいだった。