第7章 忘却の桜
「人間の本能ってスゴいね」
ニコニコと笑うトド松くん。
何が言いたいのかわからない。
「鈴音ちゃん、今反射的に僕から目をそらそうとしたでしょ?ふふっ偉い偉い」
オーキッドピンクの瞳が私をらんらんと見つめる。
誰かに似ている気がする....
でも今はトド松くんしか見えない。
「鈴音ちゃんはさ、六つ子それぞれに力があるって聞いた?」
パンパンっと土を払いながら、トド松くんは話す。
「僕の能力はね、幻惑の力なんだ。」
ギラリと光る妖しい瞳
「たとえば人を操ったり、記憶を消したりとか、人そのものの心を操って惑わせる力だよ.... あと.... 」
ふふっと笑うトド松くん....
「人の性欲を引き出したり、僕に夢中にさせたり.... とか.... ね?」
ドクンッドクンッと心臓が高鳴る
舌なめずりをしながら近寄ってくるトド松くん....
逃げなきゃ....
必死に逃げようとするけど、体が動いてくれない.....
桜の木によりかかってズルズルと落ちていく。
「無駄だよ?僕の目を見たでしょ?だからもう絶対に逃げられない.... 」
やっぱりあの時目をちゃんとそらすべきだった。
ドクンッドクンッと心臓が高鳴る。
体が熱い....
知らないこんな感覚....
目の前で膝を抱えて、じいっとオーキッドピンクの瞳が私を見つめる。
そおっと近づく妖しい瞳
耳元で囁かれるのは、危険な誘い....
「ねぇ.... 鈴音ちゃん?本当の快楽を教えてあげる.... 」