第7章 忘却の桜
ワケもわかんないまま、トド松くんにキスされた。
深く深く入り込んで、キスで殺されそうになった。
息継ぎさえさせてくれない乱暴なキスに意識が持っていかれそうになる。
思考がまわらない....
甘い甘いチェリーブロッサムの香りが、私を包んでくる。
唇の端から溢れる唾液が、キスの深さを証明する。
一瞬の隙をついてドンッとトド松くんの胸を押す。
その拍子に尻餅をつくトド松くん。
「な、な、なにすんの!この馬鹿!変態くそったれやろうが!」
思いっきり暴言を吐くも、突然の出来事のせいでいつもの鋭さが足りない。
ゆっくりと起き上がるトド松くん、下を向いていて顔の表情が見えない。
桜がさぁっと散りはじめる、満月の光がゆっくりとトド松くんの顔を照らした。
ぞくり....
背中に悪寒が走る。
トド松くんの目の色がかわっていた。
オーキッドピンクだ。
桜が夜の闇に染まって暗く、でも鮮やかに濃くなったようなそんな色....
目をそらさなきゃと本能が告げた。
でも時すでに遅く、私はトド松くんの瞳をじっと見つめてしまった。
ドクンッ....
心臓が高鳴った気がした。