第28章 初雪は淑女と共に
「ぜぇ、はぁ、ぜぇ...」
セクシーな吐息が俺のマウスからいやらしく吹きこぼれる。
「カラちゃん、大丈夫?」
心配そうなレディの顔、ここはベンチの上だ。
長いレッグを伸ばし、だらんとベンチのうえでへたばる俺。
その横で、俺を見つめ立ち尽くすレディ。
下からだとレディの愛らしい顔がこれでもかというほどに見え、この胸のトキメキを抑える事ができない。
というか、本当にドックンドックンしてる。
なにこれー、本当になにこれー!
人間ってどうしてあんなものを作っちゃったんだ、アレは人を殺せる兵器かなにかじゃないのか!?
どちらにしてもこのカラ松がアレに乗ることは二度とないだろう。
どんなに飛行が得意でも、あの落ちていく感覚は無理だ。
なんだったら、あの落ちてひゅんっという感覚が苦手だからこそ俺は飛行が得意になったんだ。
自分でするなら調節も思いのままだし、なんといっても飛行する俺の姿は最高にクールに決まっているからな!
「カラちゃん、百面相してる?具合悪いの?本当に大丈夫?」
介抱してくれるレディは、俺にはエンジェルに見える。例の乗り物のあった辺りでは、やはり悲鳴は耐えずだ。
これぞまさに天国と地獄。
「ふっ!心配するなレディ!ちょっとアレの破壊力に意識が狂いそうになっただけさ!このカラ松、あんなパチンコのまがい物で死んだりはしない!そう!何故なら俺は、松野カラ松であって悠一ではないのだから!」
「悠一ってだあれ?」
「んんっ、その話はややこしくなるから横に置いておこうかレディ!」
そうだ、ややこしくなるからその話は1度置いておこう。ジッパーの中にでも、な。
おっと、これは悪ふざけがすぎたか?
「カラちゃん、本当はああいう乗り物苦手だったの?」
「そんなことはないさ!レディが好きなものだ!またもう一度乗りたいくらいだ!」
カッコをつけて言ってみるものの、本当は乗りたくない。今度はベンチでへばるだけでは足らないだろう。