第28章 初雪は淑女と共に
「レ、レディ。あれに乗るのはやめておこう?」
「え?どうして?楽しそうだよ?」
キョトンとした顔のレディ、いや楽しいのだろうか。
目線の先に先程空へフライアウェイしたカップルが、取っ組み合いの喧嘩をしている。
いや、おもにガールがボーイを一方的に絞め殺している。
「お前、んな事思ってたのかコラァ!?」
「ひ、ひいっ、ごめんなさい!でも俺絶叫系はダメだって言ったのに、それなのに綾ちゃんが乗りたいっていうから...」
「なに?んじゃあ私のせいっていいたいの?!なぁ、コラ!なんとか言え悠一コラァ!?」
す、凄い形相だ。
何故だ、他人事に思えないのだか?
この胸が締め付けられるような痛みはなんだ?
「綾ちゃん!もう勘弁してえぇ!」
「うるせえぇ!もっぺん乗ってこい!それで私に詫び入れろやぁぁ!」
あの凄まじい形相、誰だ?誰かに似ているような気がするんだ。ウェイト待ってくれ?
トト子ちゃんだ、綾ちゃんというガールはトト子ちゃんに似ているんだ!
と、言うことは悠一というボーイは...。
「お願い、それだけは、それだけは」
....俺?
「カラちゃんどうしたの?」
ノンノンノン、そんな事あるはずかない!
なぜならばこの俺、カラ松に恐れるものなどなにもないからだ。
ワオワオワーオ、何故こんなことに気づけなかったんだ俺は!
ワンダフルな俺、ビューティフォーな俺、そんな俺があの巨大パチンコのような乗り物なんて...。
「いぎやぁぁあぁぁ!!!綾ちゃーーーん、ごべびええええん!!」
「もっと高く飛ばせぇえええー!!」
乗り物、なんて...。
ふっ...。
「カラちゃん?大丈夫?凄い汗だくになってきてるよ?」
「大丈夫!大丈夫レディ!ノープログレムだ!本当に大丈夫だ!」
この後、レディの身長の問題で乗れなくてホッとしているのも束の間。
「カラちゃんだけでも乗ってきていいよ」とレディに微笑まれ、相席待ちの人とスカイへフライアウェイする俺。
ノーグッド...。