第28章 初雪は淑女と共に
「な、なんだあれは...」
巨大なパチンコのような乗り物に、2人組のカップルが嬉嬉として乗っているのが見えた。
視力が両目ともに2.0の俺には2人が固く手を繋ぎあってるのが見える。
「イエーイ!お二人さん、お熱いねぇ!ヘイヘイ!そんな素敵な2人!言い残す事はあるかい?ベイビィ?」
のりっのりな声が周りに響く、物凄くチャラいがどうやら遊園地のスタッフのようだ。
なにやら安全バーの点検をしながらいっているんだが、なんだ?言い残す事とは?
まるで紺所の別れのようじゃないか?
「イッエーーイ!のってまぁぁす!」
ハイテンションな声のガール。
「....い、いぇーい。」
それと反対にローテンションのボーイの声は、こころなしか震えているように聞こえた。
「あれあれ?彼ピッピ?元気が足りないぜ?さーて、点検はおしまいだ。そしてお二人もまたTheENDだぜ!」
そういう仕様なんだろうな、遊園地のスタッフも大変だな。
「そんじゃ、ワン、ツー、スリーで空の彼方へ行っちゃって!」
グッとOKのサインのように、乗り物を操る別のスタッフに合図を送るノリノリスタッフ。
「ワン、ツー...発射あぁぁぁ!!?!」
「はい、おしまーす。」
スリーを言う前に行くだと!?
そして乗り物操るスタッフ、テンション低っっ!
この遊園地どうなっているんだ!?
そんなことを考えているのも束の間、バビューンと空へ飛ばされていく2人。
物凄い断末魔と共に、飛び出してゆく乗り物はさながらロケットのように高く高く上がっていく。
「「ぎゃぁああぁぁぁあ!!!!?!」」
カップルの叫び声、その合間にかすかに聞こえたのは。
「ぁぁあ!!!こんな女と付き合うんじゃなかったぁぁあ!!!」
夜空で盛大に地雷を踏むボーイの声。
どうやら相当に怖いのだろう、本音がダダ漏れだ。
「ああん!?そんなふうに思ってたんかこらぁあ!!」
ドスのきいたガールの声がその次に夜空に響いていた。